JOURNAL ・ 撮影地の記録
浜離宮のコスモス ― 江戸の庭園に咲く、ビルを背にした花畑
東京・中央区、汐留。ビルの谷間に、ふいに花畑があらわれる季節があります。将軍家ゆかりの大名庭園・浜離宮恩賜庭園。お花畑には夏のキバナコスモスが黄金色に、秋のコスモスがやわらかなピンクに揺れ、その背には高層ビルの壁がそびえます。三百年の庭と、現代の都市と。ひとつの画面に、ふたつの時間が同居していました。
花畑のむこうに、ガラスの壁
はじめてこの場所に立ったとき、思わず足が止まりました。足もとには黄金色のキバナコスモスが波打ち、視線を上げれば、汐留のオフィスタワーが空を切り取っています。柔らかな花弁と、冷たいガラスの壁。本来なら出会うはずのないふたつが、同じフレームのなかでゆらいでいる。その不思議な調和に、心が静かに動きました。風が吹くたび、花の海がさざめき、ビルの窓に小さな雲が流れていきます。自然と人工、土と鉄。対立ではなく、ひとつの風景として溶け合っているのです。都心のまんなかで、これほど大きな空と花に包まれる場所があることを、私はしばらく忘れていました。
潮入の池と、三百年の時間
浜離宮恩賜庭園は、徳川将軍家ゆかりの大名庭園です。もとは将軍家の鷹狩場であった一帯に屋敷が築かれ、のちに将軍家の別邸となりました。庭の中心にある潮入の池は、東京湾の海水を水門で引き入れ、潮の満ち引きとともに表情を変える、いまも都内で唯一の海水の池だと聞きます。国の特別名勝・特別史跡にも指定された、江戸を代表する庭です。松の枝ぶりや御茶屋のたたずまいには、ゆったりとした時間が流れています。救急の現場では、秒が命を分けることもあります。だからこそ、三百年をかけて育まれたこの庭の時間が、ことさら深く身にしみました。急がない時間に身を浸すことも、人にはきっと必要なのだと思います。
江戸の松のむこうで、花とビルが息をする。
三百年と、いまと。
訪れる方へ ― 見頃
花畑には、夏と秋、二度の見頃が訪れます。
例年、夏のキバナコスモスは8月から9月ごろに黄金色のピークを迎え、秋になると、やわらかなピンクのコスモスが10月ごろに見頃を結びます。ひとつの花畑で、季節をまたいで二度楽しめるのが、この庭の贅沢なところです。入園料は一般でおよそ300円ほど。早朝に開園日を設ける時期もあるようなので、人の少ない朝の光のなかで花と向き合いたい方は、開花状況とあわせて最新の情報をご確認ください。
アクセス
最寄りは都営大江戸線の汐留駅、または築地市場駅。いずれも歩いて数分ほどで、大手門口や中の御門口にたどり着けます。ゆりかもめの汐留駅やJR・地下鉄の新橋駅からも歩いて向かえます。少し趣を変えたい方には、隅田川を下る水上バスもおすすめです。浅草や日の出桟橋から船に揺られ、庭園の発着場へ。川面から眺める都市の表情も、旅のひとこまになります。
撮影のヒント
この庭ならではの一枚は、やはり花とビル群を一緒に収めた構図です。背景のタワーを画面の上に大きく取り込めば、江戸と現代の対比がそのまま物語になります。順光では花の色が鮮やかに澄み、逆光に回れば花弁が透けて、光そのものが主役になります。腰を低く落とし、手前のキバナコスモスを大きく前景に配すると、奥行きと花の密度が一気に増します。風のある日は、揺れをあえて活かすのも一案。空の青と花の色のバランスを見ながら、シャッターを切る瞬間を待ちました。
あわせて巡りたい
庭園を出れば、そこはもう都心の只中です。場外の活気が残る築地、洗練された街並みの銀座へは、いずれも歩いて向かえる距離。汐留の高層ビル群のなかには、空を見渡せる展望スペースや美術館も点在しています。花畑で土と空の時間を味わったあと、もういちど都市の喧騒へ戻っていく。その落差そのものが、浜離宮という場所の醍醐味なのかもしれません。
この一枚は、FUJICOLOR最高級印画紙への銀塩プリントとしてお届けします。世界各地へ発送いたしますので、あなたの部屋に、都心のオアシスの静けさを。
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