JOURNAL ・ 撮影地の記録
アナベルとスカイツリー ― 白い紫陽花が彩る、初夏の下町
東京・江東区。川沿いの一角に、雪が降り積もったように白い紫陽花が群れ咲く季節があります。手まり咲きのアナベルです。その白い波の向こうに、まっすぐ天をさす東京スカイツリー。古い水辺と新しい塔が、初夏のひとつの景色のなかで静かに出会っていました。
白い波の向こうに、塔がそびえる
はじめてその場所に立ったとき、思わず足が止まりました。背丈ほどに育ったアナベルが、見わたすかぎり真っ白に咲きそろっています。一輪ずつは小さな花の集まりなのに、群れになると、まるで初夏に降った雪のよう。そしてその純白の波の向こうに、東京スカイツリーがすっと立っているのです。古くからの下町の川辺と、現代の塔。本来なら交わらないはずのふたつが、白い花を挟んで穏やかに釣り合っている。その静けさに、心が動きました。
白から緑へ、移ろう初夏のなかで
アナベルは、咲きはじめは淡い緑、満開でまぶしいほどの白、そして咲き進むとふたたび淡い緑へと、ゆっくり色を変えていきます。同じ花が、初夏のひと月のあいだに季節をひとめぐりするようです。救急の現場で、慌ただしく時間に追われる日々を過ごしていると、この花のように静かに移ろう時間が、いっそう得がたいものに思えてきます。白がいちばん白い、そのほんの数日を狙って、私はこの一枚を撮りました。
白いアナベルの波の向こうに、
初夏の塔が、静かに立っている。
訪れる方へ ― 見頃
白がいちばん美しい、初夏のひとときに。
アナベル(アメリカノリノキ)の見頃は、例年6月ごろ。梅雨の入りとともに咲きはじめ、6月の上旬から中旬にかけて、もっとも白く満ちた姿を見せてくれます。咲きはじめの淡い緑、まばゆい白、咲き終わりのアンティークな緑と、訪れる時期によって違う表情に出会えるのも、この花ならではの楽しみです。雨に濡れた白も、晴れた日の青空を背にした白も、それぞれに美しいものです。
アクセス
撮影地は、東京都江東区。東京スカイツリーを望む、川沿いのエリアです。下町の真ん中にありながら、最寄り駅から歩いて向かえる距離にあります。都心からのアクセスもよく、紫陽花の季節には、散策がてら立ち寄る方も少なくありません。お出かけの際は、最寄り駅や経路の最新情報をあらかじめご確認のうえ、ゆったりとした時間に訪れるのがおすすめです。
撮影のヒント
白い花は、撮ると思いのほか暗く写りがちです。露出を少し明るめに補正すると、アナベルの純白がいきいきと立ちあがります。スカイツリーを背景に置くなら、塔と花の高さのバランスを意識して、低い位置から見あげるように構えると、白い波と塔の対比が際立ちます。手前の一輪を大きくぼかして前ボケに使えば、奥行きが生まれ、群れ咲きの世界へとそっと視線を導けます。曇りの日のやわらかな光も、白を撮るには好相性です。
あわせて巡りたい
足をのばすなら、ぜひ下町の散歩も。倉庫街がカフェ街へと生まれ変わった清澄白河、木立と運河の落ち着いた木場、そしてスカイツリーのおひざもと押上。コーヒー一杯で一息ついたり、川沿いをのんびり歩いたりするうちに、紫陽花の白と塔の景色が、ゆっくりと心に残っていきます。初夏の江東区は、歩く速さで味わうのがよく似合う街です。白い花の季節は短く、咲き始めの淡い緑から純白へ、やがて落ち着いた緑へと、日ごとに表情を変えていきます。その移ろいを追いかけるように、同じ川辺へ何度も足を運びたくなる花です。