JOURNAL ・ 撮影地の記録
昭和記念公園のコスモス ― 花の丘を染める、秋の魔法
東京・立川。広い空の下に、まるごと黄金色に染まる丘があります。なだらかな斜面を、数百万本のキバナコスモスが埋めつくし、風が吹くたびに花の海が一斉にうねる。都心から電車で小一時間、けれどそこにあるのは、どこか遠い国の夏の終わりのような、静かで眩しい風景です。
丘いっぱいの花が、いっせいに揺れる
国営昭和記念公園の「花の丘」は、公園のなかでもいちばん大きな花畑です。およそ一万五千平方メートルのなだらかな斜面に、キバナコスモスがおよそ四百万本。立っているだけで、視界の端から端まで花で満たされます。丘のてっぺんに立つと、足もとから空の境までが黄色とオレンジの斜面でつながって、自分が花の海に浮かんでいるような心地になる。人が心を動かされるのは、たぶんこの「スケールに飲み込まれる」感覚なのだと思います。一輪一輪は小さく素朴な花なのに、数百万本が集まると、ひとつの大きな生きもののように呼吸して見えるのです。
レモン色から、夕陽の色へ
キバナコスモスには、季節をまたいで表情を変える品種があります。夏の終わりに咲きはじめるのは、爽やかなレモンイエローの早咲き種。やがて秋が深まると、丘は燃えるようなオレンジ色へと移ろい、夕暮れどきの太陽をそのまま地面に降ろしたような色になります。掲げた一枚は、その色の盛りに、誰かが飛ばしたシャボン玉がふっと舞い込んだ一瞬です。光をまとった球がいくつも宙を漂い、花の上で銀色に光って、また消える。救急の現場で時間と追いかけっこをする日々のなかで、こうした「二度と戻らない数秒」に立ち会えることは、何ものにも代えがたい贈りものに感じます。
丘いっぱいの黄金が、風にひとつになる。
花の上で、光がそっとほどける。
訪れる方へ ― 見頃
夏の終わりから秋にかけて、花の色が二度移ろいます。
花の丘のキバナコスモスは、例年、早咲きのレモン色が夏の終わり(およそ七月下旬〜八月)からほころびはじめ、九月にかけてオレンジ色が丘を染めます。さらに十月ごろには、原っぱの花畑でピンクや白の「秋のコスモス」が見頃を迎え、公園全体ではあわせて数百万本ものコスモスが楽しめます。開花は年により二週間ほど前後するので、お出かけ前に公式の開花状況を見ておくと安心です。入園には大人の入園料がかかり、中学生以下はおよそ無料、シニア料金もあります。最新の料金は公式でご確認ください。
アクセス
いちばん近いのはJR青梅線「西立川駅」で、公園口を出ると花の丘側の西立川口まで歩いてほんの数分です。JR中央線・青梅線・南武線が集まる「立川駅」からも、北口から立川口までおよそ十分ほど。都心からの行き帰りに立川駅を使えるので、思い立った日にも訪ねやすい公園です。
撮影のヒント
まずは丘のいちばん下から見上げて、斜面いっぱいの花を画面に詰め込んでみてください。空を少なめにすると、花の量感がそのまま伝わります。光は午後の斜光や逆光が魅力的で、花びらが透けて金色に輝きます。手前の一輪にぐっと寄って前ボケをつくると、奥の花畑がやわらかな色の霧になり、立体感が生まれます。風のない朝は花が静止して撮りやすく、もしシャボン玉が舞っていたら、玉が光をまとう一瞬を待つのも忘れずに。
あわせて巡りたい
昭和記念公園は、四季を通じて花の絶えない公園です。春はチューリップや桜、菜の花、初夏のポピーやアジサイ、晩秋には黄金色のイチョウ並木と、訪ねるたびに違う表情が待っています。広い園内は一日ではまわりきれないほどで、水鳥の池やゆったりした原っぱでの休憩も心地よい時間です。帰りに立川駅まわりで早めの夕食をとって、花の余韻とともに一日を締めくくるのもおすすめです。