JOURNAL ・ 撮影地の記録
祐斎亭の花窓 ― 円窓と黒机に映る、嵐山の紅葉
京都・嵐山。大堰川を見下ろす丘に、ひっそりと佇む数寄屋があります。染色家のアトリエ「祐斎亭」。まるい円窓が一枚、まるで絵を掛けるように、向こうの紅葉を切り取っています。磨かれた黒い机には、その赤が静かに映り込み、もう一つの秋がそこに沈んでいました。
円窓という名の額縁
はじめてあの部屋に入ったとき、思わず足が止まりました。壁にうがたれた、まんまるの窓。ただそれだけのことなのに、向こうに広がる嵐山の紅葉が、まるで一幅の掛軸のように立ち上がってくるのです。四角い窓なら見過ごしていたかもしれない景色が、円という線で囲まれただけで、不思議と心の奥に届きます。余計なものをそぎ落とし、ただ美しいものだけを差し出す。円窓は、そういう静かな額縁なのだと思いました。季節が移ろうたび、この窓に掛かる絵は描きかえられていくのでしょう。
黒い机に沈むもう一つの秋
円窓の手前には、漆のように磨き上げられた黒い机が据えられています。そこへ顔を寄せると、机の表面に紅葉がそっくり映り込み、まるで水をたたえた鏡のように、上下対称のもう一つの世界が現れます。本物の紅葉と、机に沈んだ紅葉。どちらが実像なのか、しばらく分からなくなるほどでした。救急の現場で、秒を刻むような時間を過ごしてきた私にとって、この静けさはまるで別の惑星のよう。シャッターを切る指さえ、ためらうほどの沈黙がそこにありました。
窓の向こうに、秋がひとつ。
机の底に、秋がもうひとつ。
訪れる方へ ― 見頃
いちばん気になる、見頃と訪ね方のこと。
祐斎亭の紅葉は、例年11月中旬から下旬にかけて見頃を迎え、年によっては12月上旬まで色が残ります。この時季はとても人気が高く、見学はおおむね事前予約制とされています。拝観料がかかり、紅葉の特別期間は通常期より料金が変わることもあるようです。予約の要否や料金、夜間ライトアップの有無は年によって異なりますので、最新の情報は必ず公式の案内でご確認ください。静けさを味わうなら、開館直後の時間帯がおすすめです。
アクセス
嵐山の玄関口、嵐電(京福電鉄)嵐山駅、またはJR嵯峨野線の嵯峨嵐山駅が起点になります。渡月橋の北詰から大堰川の流れを左手に見ながら、上流へと川沿いをゆるやかにのぼっていくと、徒歩でおよそ15〜20分。翡翠色の川と山の景色を楽しみながら歩くうちに、いつの間にか喧騒が遠ざかり、祐斎亭の入口にたどり着きます。道のりそのものが、すでに嵐山の秋の一部です。
撮影のヒント
主役はやはり、円窓と机のリフレクションです。窓のまるい線をきちんと画面の中に収めると、額縁効果が生まれて紅葉がぐっと引き立ちます。机に映り込む像を狙うときは、思いきって露出を抑えめにすると、黒の深みが増し、赤がいっそう冴えます。三脚の使用は制限されている場所が多く、祐斎亭でも可否は時季によって案内が変わることがありますので、訪れる前に最新のルールをご確認ください。何より、ほかの拝観の方への心くばりを忘れずに。
あわせて巡りたい
祐斎亭を出たら、せっかくの嵐山です。大堰川にかかる渡月橋は、嵐山の象徴ともいえる眺め。少し足をのばせば、光がさやさやと差し込む竹林の小径や、苔と紅葉が美しい寺社も点在しています。川下りの舟やトロッコ列車から眺める渓谷の紅葉もまた格別です。一日かけて、円窓に始まる嵐山の秋を、ゆっくりと歩いてみてください。
この一枚は、FUJICOLOR最高級印画紙への銀塩プリントとしてお届けします。世界各地への発送に対応し、円窓に切り取られた嵐山の静けさを、そのままあなたの壁へ。
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