JOURNAL ・ 撮影地の記録
ジニア畑 ― 夏のみはらしの丘を染める、百日草の虹
茨城・ひたちなか。春には空の色に、秋には燃える紅に染まるあの丘が、夏のあいだだけ、まったく別の表情を見せます。赤、桃、橙、黄。色という色をすべて集めたような花の畑が、夏空の下でゆれている。ジニア ― 百日草の咲く季節です。
同じ丘で、季節を待つ
ネモフィラの青が記憶に残っている方ほど、夏のこの丘を見ると、少し戸惑うかもしれません。あの一面の青はどこへ行ったのか、と。けれど丘をのぼっていくと、答えはすぐに目の前に広がります。青のかわりに、虹のすべての色が待っているのです。ジニアは次々と花を咲かせ、長く咲きつづけることから「百日草」とも呼ばれます。その名のとおり、夏のあいだ、丘はずっと色を絶やしません。
ひとつの丘が、一年をかけて見せるもの
この丘の面白さは、一年のなかで何度も衣替えをすることにあります。春はネモフィラの青い海。夏はジニアの色とりどりの絨毯。そして秋には、まるく茂ったコキアが緑から真紅へと染まっていく。同じ場所に立っているのに、訪れる季節によって、まるで知らない丘に来たような気持ちになる。私が何度もここへ通うのは、その変わりつづける表情を、一枚ずつ留めておきたいからです。花の盛りは長くは続きません。だからこそ、夏のこの色は、その夏かぎりのものなのだと思います。
丘のてっぺんで、夏のすべての色がそろう。
風にゆれる、百日草の虹。
訪れる方へ ― 見頃
ここからは、実際に足を運ぶ方のための覚え書きです。数字や料金は変わることがありますので、最新は公園の公式サイトでご確認ください。
ジニアの見頃は、例年おおむね夏から初秋にかけて。早い年は盛夏に、遅い年は九月の声を聞くころまで楽しめます。丘の斜面を埋める花の数はおよそ三万本ともいわれ、近づくと一輪ずつ表情がちがうのがよくわかります。入園料は高校生以上で数百円ほど、中学生以下は無料、シルバー料金もあります。ただしネモフィラやコキアの最盛期には季節料金が加わることがあるため、訪れる時期の料金は出かける前に確かめておくと安心です。
アクセス
最寄りはJR常磐線の勝田駅です。駅から路線バスで西口・南口まで十五分から二十分ほど。本数は時間帯によって変わるので、帰りの時刻もあわせて見ておくと焦らずにすみます。車の場合は常磐自動車道のひたち海浜公園インターチェンジからすぐですが、夏の週末は駐車場が混み合います。朝いちばんの開園に合わせて入ると、光もやわらかく、人も少なく、写真にはいちばんよい時間です。
撮影のヒント
ジニアは色が強い花です。だからこそ、真昼のかたい光より、朝夕のやわらかな斜光のほうが、一輪ずつの立体感がきれいに出ます。丘という地形を生かすなら、低くかまえて花を前ボケに置き、奥の斜面まで色が続いていくように撮ると、あの「色の海」の広がりが伝わります。空を入れるなら、夏の青と花の暖色の対比を意識して。風のある日は、あえてシャッターを少し遅くして、花のゆらぎを残すのもこの季節らしい一枚になります。
あわせて巡りたい
園内は一日では歩ききれないほど広く、ジニアのほかにもヒマワリやパンパスグラスが夏を彩ります。少し足をのばせば、那珂湊のおさかな市場で水揚げされたばかりの魚介を味わえますし、海岸沿いをドライブすれば、太平洋の水平線がどこまでも続いています。花の丘と、海と、港町。一日かけて、夏のひたちなかをゆっくり巡ってみてください。