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夕暮れの空に三日月を背負って立つ東寺の五重塔のシルエット

JOURNAL ・ 撮影地の記録

東寺の五重塔 ― 三日月と夜紅葉に浮かぶ、日本一高い塔

📍 京都府・東寺 🍁 見頃 11月中旬〜下旬(例年)

京都駅の南、八条通を少し西へ歩くと、街並みの向こうに高い塔が見えてきます。東寺の五重塔。高さおよそ五十五メートル、いまも残る木造の塔としては日本一の高さです。秋の夕暮れ、その輪郭が藍色に沈んでいくころ、空のいちばん高いところに、細い三日月がそっと懸かっていました。

夕月を背負う、塔のかたち

日が落ちると、塔はまず色を失います。瓦の重なりも、組まれた木のひとつひとつも、夕焼けの残り火を背にして、ただ黒い影のかたちになっていく。そのとき空に三日月が出ていると、心が静かに動きます。塔は千二百年ぶん地に根を張ったまま動かず、月はゆっくりと、けれど確かに、その肩のうえを渡っていく。動かないものと、めぐるもの。そのふたつが一枚の空に並ぶ瞬間に、私はいつも見入ってしまいます。塔の影は、装飾を削ぎ落とした分だけ、かえって雄弁です。何層にも積まれた屋根のリズムが、夕空の階調のなかにくっきりと浮かび、見上げる首の角度が、そのまま祈りの姿勢に似てくる。派手な色はひとつもないのに、夕月のシルエットほど胸に残る東寺の景色を、私はほかに知りません。

夜のあかりと、水に映る千二百年

秋の夜、東寺は特別にあかりを灯します。境内のおよそ二百本の紅葉が照らし出され、金堂や講堂が闇のなかに静かに立ちあらわれる。そして瓢箪池のほとりに立つと、もうひとつの五重塔が水面に現れます。風のない夜ほど、水鏡は澄み、塔と紅葉が上下に対になって、池はそのまま夜空の続きになる。揺らぎのない反射のなかで、千二百年という時間がふと身近に感じられます。空海がこの塔を志してから、四度焼け、五度建て直されて、いまの姿になった。人の一生をいくつ重ねても届かない長さです。救急の現場で、私はいつも秒を数えています。一分一秒が結果を分ける世界に身を置いていると、この塔の前に立つ時間が、ことさら静かに、ありがたく感じられるのです。

動かない塔の肩を、三日月が渡っていく。
水鏡の底にも、もうひとつの千二百年。

訪れる方へ ― 見頃

夕景と夜景、二つの時間を一度に楽しめるのが東寺の秋です。

紅葉の見頃は例年十一月中旬から下旬、年によっては十二月上旬まで色が残ります。秋には金堂・講堂の夜間特別拝観とライトアップが行われ、近年はおよそ十一月初旬から十二月中旬の夕方六時ごろから夜九時過ぎまで開かれてきました。夜間特別拝観の料金はおよそ大人千円・中学生以下五百円ほど、昼の金堂・講堂の拝観料(大人五百円ほど)とは別になります。期間も時間も料金も年によって変わりますので、お出かけ前に必ず東寺の公式案内で最新情報をご確認ください。

アクセス

いちばん分かりやすいのはJR京都駅から歩く道です。南側の八条口を出て八条通を西へ、油小路通を南に折れると、東寺の門までおよそ徒歩十五分。近鉄をお使いなら、京都駅から一駅の近鉄東寺駅で降りて、そこから徒歩十分ほどです。夜間拝観の帰りも京都駅まで歩いて戻れる近さなので、はじめての方にも安心して訪ねていただけます。

撮影のヒント

夕月のシルエットを狙うなら、日没の前後三十分が勝負どきです。空がまだ明るさを残すこの時間に、塔と月を一枚の画面に収めます。塔を小さめに配して空を広く取ると、月との距離感が素直に出ます。夜のライトアップでは、あかりが点いても光量は十分ではありませんから、三脚を立てて数秒の長秒露光を基本に。瓢箪池の水鏡を狙う日は、できるだけ風のない夜を選び、低い位置から水面すれすれにカメラを構えると、塔と紅葉の反射がいちばん美しく対になります。三脚使用の可否や立ち位置は拝観案内の指示に従い、まわりの方の妨げにならないよう気を配りましょう。

あわせて巡りたい

東寺は京都駅のすぐ南、徒歩圏のなかにあります。塔を見上げたあとは、駅周辺へ戻って一息つくのもよし、足をのばすなら、かつて平安京の正門が立っていた羅城門の跡へ。いまは小さな児童公園のなかに石碑が静かに立つだけですが、千二百年前、この大路の南の果てに朱塗りの大門がそびえていたと思うと、東寺の塔の古さがいっそう胸に沁みます。失われた門と、残った塔。京都の秋は、その両方を歩いて巡れる距離にあります。

📍 所在地京都府京都市南区・東寺(教王護国寺)
🍁 見頃例年11月中旬〜下旬(年により12月上旬ごろまで)
🗼 見どころ五重塔(高さ約55m・現存最高の木造塔)/夜のライトアップ・水鏡
🎫 拝観料昼の金堂・講堂はおよそ大人500円。夜間特別拝観は別途(およそ大人1,000円・中学生以下500円)。最新は公式で
🚉 アクセスJR京都駅から徒歩約15分/近鉄東寺駅から徒歩約10分
ℹ️ 最新情報見頃・夜間特別拝観の期間や料金は、東寺の公式拝観案内をご確認ください
夜のライトアップで瓢箪池の水鏡に映る東寺の五重塔と紅葉のプリント
🍁 三日月と夜紅葉の東寺を、一枚に

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