撮影術・機材
紅葉の撮り方 ― 透過光・雨上がり・PLフィルター
紅葉は、日本でいちばん撮られている被写体のひとつです。それでも「見たときの赤」が写らないという声が絶えないのは、たいてい光の当て方の問題です。もみじの葉は薄く、光を通します。だから紅葉は、照らして撮るのではなく透かして撮るもの。この一点を変えるだけで、同じ木が別物になります。
紅葉は、光を「通して」撮る
順光――太陽を背にして撮ると、葉は表面で光を反射します。色は出ますが、どこか鈍く、平板になりがちです。いっぽう逆光や半逆光で葉の裏から光を入れると、薄い葉が光を透過してステンドグラスのように発色します。同じ赤でも、内側から光っているように見える。紅葉の写真で「これだ」と思う一枚は、たいていこの透過光です。
実際の現場では、まず太陽と自分と木の位置関係を変えることから始めます。数歩まわり込むだけで、葉の色は驚くほど変わります。三脚を据えるのはそのあとです。京都・東福寺の通天橋の紅葉は、約2,000本のカエデが朱・橙・黄に染まる渓谷を、深緑の杉木立と対比させた一枚。もみじ回廊(山梨・河口湖)は、赤・橙・黄・緑が折り重なるトンネルそのものが光の回廊になっています。
雨上がりが、いちばん濃い
紅葉を撮るなら、晴天よりも雨上がりか、薄曇りを狙う価値があります。理由は三つあります。
快晴の正午は、実は紅葉にとって最悪に近い条件です。光が硬く、影が黒く落ち、葉のテカリで色が飛ぶ。同じ場所へ行くなら、雨の翌朝を選んだほうが確実です。天気予報を見て「雨だからやめる」ではなく、「雨が上がる時間に着く」ように組むと、撮れる写真が変わります。
PLフィルターを、どこで使うか
PL(偏光)フィルターは、紅葉撮影でもっとも効果が見えやすい道具です。仕組みは単純で、葉の表面や水面で反射した光のうち、特定の方向に振動する成分だけをカットします。結果として葉のテカリが消え、その下にあった本来の色が出てくる。回すだけで彩度が変わるので、効果はファインダーの中で確認できます。
いちばん効くのは、濡れた葉と水面です。雨上がりの照り返しを抑えれば、赤はぐっと深くなります。愛知・香嵐渓の香嵐渓の紅葉のように巴川の水面に紅葉が映り込む場面では、反射をどこまで残すかで写真が変わります。全部消すと水底が見え、残すと鏡になる。PLは「消す道具」ではなく「反射量を決める道具」だと考えると、使い方が定まります。
使わないほうがいい場面もあります。広角レンズで空を大きく入れると、空の偏光ムラが出て青が不均一になります。また、PLは光を1〜2段ぶん減らすので、暗い渓谷や夕方には手ブレの原因になります。効果が要らない場面では外す――ソフトフィルターと同じで、着けっぱなしにしないのがコツです。
時間帯 ― 朝がいい理由
紅葉の名所は、とにかく混みます。朝がいいのは、光が低くて斜めから入るからというだけでなく、人が少なく、三脚を据えられる余地があるからです。栃木・奥日光の明智平の紅葉のような展望地では、立ち位置が数十センチ違うだけで華厳の滝と中禅寺湖の重なり方が変わります。良い位置に立てる時間に着くこと自体が、技術の一部です。
夕方の斜光もよく効きます。山梨・河口湖の富士山ともみじのように、遠景の山と手前の葉を一枚に収める構図では、逆光ぎみの時間帯のほうが手前の葉が発色します。
額縁で切り取る
紅葉は、広く撮ると散漫になりがちです。そこで効くのが、建築や窓を額縁として使う構図です。京都・東福寺の通天橋からの錦秋は、木組みの欄干と架構が約2,000本の楓の海を切り取り、奥に開山堂の屋根が佇む一枚。手前を暗く落として奥の紅葉を明るく残すと、視線が自然に奥へ吸い込まれます。露出は明るい紅葉側に合わせ、手前のシルエットは潰しきってしまってかまいません。
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夜の紅葉は、別の道具立てになる
ライトアップの紅葉は、昼とはまったく別の撮影です。数秒から十数秒の露光になるため三脚が前提になり、PLよりもホワイトバランスと白飛び管理が主役になります。京都・東寺の夜紅葉や八瀬の瑠璃光院・夜の机もみじのような場面の撮り方は、三脚と、夜の撮影にまとめました。なお寺社のライトアップは三脚禁止のことがあるので、事前確認を忘れずに。
秋に持っていくフィルター
ケンコー ZX(ゼクロス)C-PL N 77mm
角型フィルターを構える時間がない、歩きながら紅葉や花を撮る日に多用しているのがこれです。レンズ前に着けるだけで葉や花びらのテカリを抑え、色がぐっと深くなります。ケンコーのZX(ゼクロス)は、写りへの影響が少ない高品質な円偏光フィルターです。
ソフトフィルターとの使い分けも一行だけ。PLが反射を引き算して色を濃くする道具なのに対し、ソフト系はハイライトを足して光を柔らかくする道具です。紅葉の彩度が目的ならPL、逆光の光そのものを主役にしたいならソフト――詳しくはふんわり撮る、二つの道に書きました。
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見頃を外さないために
どれだけ技術があっても、色づいていない木は撮れません。紅葉前線は同じ場所でも年ごとに一週間以上動きますし、標高が数百メートル違えば見頃も数週間ずれます。奥日光のような高地は10月、京都の名刹は11月下旬というのが大まかな目安ですが、直前の気温で前後します。各地の見頃の目安とアクセスは、紅葉の絶景名所ガイドにまとめています。
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