撮影地ガイド
岩井の堰 ― 菜の花の黄を、河津桜が囲む
千葉、旭市。都市の気配がすっかり消えた里の奥に、早春だけの色があります。一面の菜の花の黄色を、ぐるりと囲むように咲く河津桜の濃いピンク。その向こうには照葉樹の山並み。里の春は、こんなにも色が豊かなのかと、立ちつくしてしまいました。
黄色とピンクが、隣り合う
河津桜を追いかけて東京の川辺をいくつか歩いたあと、千葉、旭市の岩井の堰へ向かいました。車を降りると、都市の気配は完全に消えていました。かわりに広がっていたのは、一面の菜の花の黄色です。そしてその黄色を囲むように、河津桜の濃いピンクが咲いていました。
濃いピンクと、やわらかな黄色。ふつうなら喧嘩しそうな二色が、早春の淡い光のもとでは、なぜかおだやかに釣り合っています。奥には照葉樹の山並みが重く緑を沈めていて、その暗さがあるからこそ、手前の二色がいっそう鮮やかに立ちあがる。里の春は、こんなにも色が豊かなのかと驚きました。街の桜は「早く咲いた」ことに意味があります。けれどここの桜は、菜の花と一緒に咲いてはじめて完成する。同じ河津桜なのに、役割がまるで違うのです。
早春の田園を、広角で
私はいつも、被写体が画面いっぱいに満ちる密度を探しています。この場所では、それが簡単でした。しゃがんで菜の花に近づけば、画面の下半分が黄色で埋まる。そのまま奥へ視線を送れば、桜のピンクの帯があり、その上に山並みがある。三層が自然に積み重なるのです。日本の田園に春が訪れる、その瞬間そのものを切り取れた気がしました。
菜の花の黄を、桜が囲う。
里の春は、色が多い。
訪れる方へ ― 見頃
街の河津桜より、すこし長く楽しめる里の花です。
旭市の案内では、岩井の堰の河津桜と菜の花の見頃は例年二月下旬から三月中旬とされています。旭市の広報でも「河津桜と菜の花が見頃を迎えていました。鮮やかなピンクと黄色のコントラストが一面に広がり、訪れた人たちは、散歩や記念撮影をして春の訪れを楽しんでいました」と紹介されています。開花は年により前後しますので、出かける前に最新の状況をご確認ください。開花情報は旭市観光物産協会のInstagramで発信されています。
なお旭市は、岩井の堰について「近くにため池がありますので、十分ご注意ください(小さなお子様をお連れの場合は目を離さないようにしてください)」「※ため池には絶対に入らないでください」と呼びかけています。あわせて、菜の花畑への立ち入りや、花や枝を採ることも禁止されています。一面の黄色は、誰かが手をかけて育てているものです。畦の外から、そっと眺めてください。
アクセス
旭市の案内による所在地は、旭市岩井百二十番地。アクセスは旭市コミュニティバスの海上ルート「岩井不動下」から徒歩五分程度と案内されています。駐車場やお手洗いについては旭市の案内に記載がありませんので、車で向かう方は事前に旭市(商工観光課)や旭市観光物産協会へお問い合わせいただくのが確実です。
撮影のヒント
色の対比が主役の場所ですから、ピンクと黄色を画面の中で必ず隣り合わせにしてください。離してしまうと、ただの「桜の写真」と「菜の花の写真」になってしまいます。低い位置から広角で構え、手前の菜の花を大きく入れると、画面の下半分が黄色で満ち、奥の桜の帯が浮かびます。
河津桜は色が濃いぶん、明るく撮ると花の階調がとびやすい花です。少し露出を抑えめにすると、あの濃いピンクが沈まずに残ります。菜の花は逆に暗く落とすと黄色が濁るので、二色のどちらを立てるかを先に決めてから露出を決めるとまとまります。曇りの日のやわらかい光は、両方の色をいちばん素直に出してくれます。
あわせて巡りたい
同じ河津桜でも、川辺と里ではまるで表情が違います。東京へ戻れば、旧中川の水辺には二月の川面に桜とスカイツリーが映り込む景色があり、押上の東武橋では塔の足もとで濃いピンクが咲きます。都市の桜と、里の桜。ひとつの季節を二つの場所で見ると、河津桜という花の懐の深さが分かってきます。房総をさらに巡るなら、雑木林の林床を赤く埋める村上緑地公園の曼珠沙華も、季節を変えて訪ねたい場所です。
菜の花の黄色を河津桜が囲む、日本の田園に春が訪れる瞬間。この一枚をFUJICOLOR最高級印画紙への銀塩プリントでお届けします。世界中へ発送いたします。
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