機材レビュー
マルミ ソフトファンタジーII レビュー ― 出会ったときだけ、着ける
1年以上、撮影に持ち歩いているソフトフィルターです。先に結論を書くと、良い道具だと思っています。ただしいつも着けている道具ではありません。着けるのは「印象的な絵画になりそうな風景に出会ったとき」だけ。このレビューでは、その判断のしかたと、道具そのものの性格――何をして、何をしないのか――を書きます。
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何をする道具なのか
ソフトフィルターは、レンズの前に着けるガラスです。表面にごく浅い凹凸や微細な粒子が仕込まれていて、通り抜ける光をわずかに拡散させます。効果がいちばん出るのはハイライト――明るい部分が周囲へふわりとにじみ出し、硬い光が空気をまとったように見える。暗部はほとんど変わらないので、写真全体がぼやけるのとは違います。ピントは合っているのに、光だけが柔らかい。それがこのガラスの正体です。
私が着ける判断
使いどころを聞かれると、いつも同じ答えになります。
印象的な絵画になりそうな風景に出会ったときにつけるときがありますね。
― Ikebanadoctorこの一文に、この道具の使い方はほとんど尽きていると思います。記録として残したい場面には着けません。着けるのは、目の前の景色が写真というより絵に近く見えたとき。逆にいえば、それ以外の日はバッグに入ったままです。出番が多い道具ではありません。それは欠点ではなく、この道具の性格だと思っています。
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同じ道具と、同じ光の話。続けて読むと、撮り方がつながります。
効果はどう出るか
着けて撮ると、変化は主に二つの形で現れます。ひとつは点光源のにじみ。木洩れ日、水面のきらめき、街灯、逆光でハイライトになった葉の縁――そうした小さな光の点が、周囲へふわりと広がって光の玉になります。もうひとつはコントラストの緩みで、明るい部分から暗い部分へ光がわずかに漏れるぶん、画面全体の締まりが少しゆるみます。黒が浅くなる、と言ってもいい。これを「眠い」と取るか「空気が写った」と取るかが、この道具の好き嫌いを分けます。
効きがいちばん出るのは、明暗差のある場面です。逆光や半逆光で花びらの縁が光っているとき、朝夕の低い太陽が画面に入るとき、白い花に強い光が当たっているとき。光の粒が画面のどこかで飽和している場面ほど、にじみは素直に出ます。曇天のフラットな光では、効果はほとんど見えません。もともと拡散した光には、拡散させる余地が残っていないからです。「柔らかく撮りたいから曇りの日に着ける」は、じつは逆。硬い光の日にこそ効く道具です。
強さの選び方
効きの強弱は、まず製品の番手(効果の強さ)で決まります。加えて、絞りでも変わります。開けるほど強く、絞るほど弱くなる傾向があるので、同じフィルターのままF2.8とF11で撮り比べておくと、一本のレンズの中でどれだけ効かせられるかの幅がつかめます。使いはじめは「思ったより効きすぎる」と感じることが多いので、効果の弱い側から入るのが安全です。
不満は無い。ただし、万能でもない
1年以上使って、この製品そのものへの不満は特にありません。作りにも効きにも、直したいところが思い当たらないというのが正直なところです。ただし「不満が無い」は「どんな場面にも使える」とは違います。レビューとして意味があるのは、むしろここから先だと思うので、向き不向きを分けて書いておきます。
実務的な注意も三つ。ひとつ、フィルター径ごとに必要です。私は標準ズーム用に77mm、40mm単焦点用に52mmを使い分けています。ステップアップリングで一枚を共用する手もありますが、フードとの相性は事前に確認してください。ふたつ、着けっぱなしにしないこと。夜景やイルミネーションのように点光源が多い場面では、光の粒がすべて広がって別物の絵になります。狙ってやるなら強力ですが、記録性が要る場面では外します。みっつ、撮影データに残りません。半年後に「この一枚は着けていたか」と悩むことになるので、着けた日はメモを残しておくと確実です。
「後処理で代用できないのか」もよく聞かれます。弱い効果なら、Lightroomのかすみの除去をマイナスにするなどでかなり近づきます。ただ、強い点光源のまわりは、レンズの前で光学的に広げたほうがハイライトの広がり方が自然に見えるというのが実感です。買う前に、手持ちの写真を一枚それで試してみるのは良い判断だと思います。
軽いから、出会いに間に合う
この道具の本当の利点は、じつは効果そのものより持ち出すコストがほとんどゼロなことだと思っています。薄いガラス一枚です。バッグの隅に入れておいても、重さとして意識に上がらない。だから「今日は使わないかも」と思う日でも置いていかずに済み、結果として「絵になりそうな風景」に出会ったその場で着けられる。
家に置いてきた機材は、その日は存在しないのと同じです。私が機材を選ぶときの基準はいつもここにあります――持って出かけたくなるカメラを選ぶのも、これなら持っていってもいいと思える三脚を選ぶのも、同じ理由です。
にじみとは、どういう見え方か
ここは正直に書いておきます。いま販売している作品のなかに、このフィルターで撮ったものはありません。ですから、このフィルターの作例としてお見せできる写真はありません。
代わりに、にじみそのものがどういう見え方をするかの参考として、オールドレンズ HELIOS-44-2 58mm F2 で撮った作品を並べます。いずれもフィルターは着けていません。このにじみはレンズ自体の描写であって、ソフトフィルターが作ったものではありません。仕組みが違うので、見え方も完全に同じにはなりません。それでも「ハイライトが周囲へ広がると写真はこう変わる」という感触は、いちばん近い形で伝わると思います。
オールドレンズのにじみ ― 三枚
いずれも HELIOS-44-2 58mm F2 で撮影した作品です(ソフトフィルターは使っていません)。FUJICOLOR最高級印画紙の銀塩プリントでお届けします。
二つの道――現代レンズにフィルターを重ねる道と、はじめからにじむレンズを選ぶ道――の違いは、ふんわり撮る、二つの道で比べています。この記事が道具そのもののレビューだとすれば、あちらはやわらかさをどう作るかという表現の話です。
買うなら
マルミ ソフトファンタジーII(DHG SOFT FANTASY II)
私が撮影に持ち歩いているソフトフィルターです。ハイライトがふわりとにじみ、硬い光が空気をまとったように柔らかくなります。着ける・外すで表現を切り替えられるのが、この道具のいちばんの強みです。標準ズーム用に77mmを使っています。
径は、着けたいレンズのフィルター径に合わせて選びます。私は標準ズーム用に77mm、40mm単焦点用に52mmを使い分けています(52mmを含むほかの機材は撮影機材ガイドにまとめています)。
この記事で作例としてご覧いただいた3点を含め、オールドレンズ HELIOS-44-2 58mm F2 で撮った作品は10点あります。すべてFUJICOLOR最高級印画紙の銀塩プリントでお届けしています。
HELIOS-44-2で撮った10点を見る →